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活動報告

被災地を支援する

2012/11/30

"よそもの・わかもの・ばかもの"の力――NPOパートナー協働事業

前回に引き続き、Civic Forceのパートナー「からくわ丸」について紹介します。

過疎化が進む地域のまちを盛り上げようと、「からくわ丸」は、“よそもの・わかもの・ばかもの”の力を生かして奮闘中。地域の魅力を再発見してもらおうと始めた「まち歩き」や、地域の若者に交流の場を提供する「ルーキーズサミット」など、若手ならではのアイデアが光る地道な取り組みは、徐々に地域の人に認知され、被災地行政が推進するまちづくり事業のモデルとしても注目を集めています。

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resizeDSC05497.jpg外部の若者と地元の“案内人”とがまちを歩く「まち歩き」や、地域の若者と一緒にまちの将来について話し合う「ルーキーズサミット」など、外から来る若者ならではの驚きや気づきを地元の魅力の再発見につなげ、地域活性化の手がかりにしようと2012年5月に設立された「からくわ丸」。メンバーは現在14人。平均年齢は20代前半で、唐桑出身のメンバーと県外から来たメンバーとの混合チームです。

まちおこしの活動を始めたきっかけについて、兵庫県出身の加藤拓馬代表は「最初からまちおこしなんて大それたことを考えていたわけじゃない」と言います。東日本大震災発生時、大学卒業間近だった加藤さんは、ベンチャー企業への就職が決まっていましたが、「東北で何かできることはないか」と2011年4月上旬に宮城県気仙沼市に向かいます。そのときに初めて足を踏み入れたのが、現在の活動拠点となる唐桑町。瓦礫撤去や家屋の片付けなどのボランティアを行うなか、人々のあたたかさやリアスの美しい自然に魅了されます。一方、地域の人々と親しくなるにつれて、被災者の“本音”も聞こえるようになりました。被害規模の違いなどに起因する近隣住民間の亀裂やボランティアに対する不満の声などを耳にし、「このままでは震災を機にみんながばらばらになってしまう」と感じるようになりました。

そこで、地域の人たちの前向きな声を取り上げる情報誌『KECKARA けっから』を発行し始めましたが、それだけでなく、「もっと深くまちの復興にかかわりたい」と考えるようになりました。そんなとき、知人から一冊の本が送られてきました。その土地の人々の声に耳を傾け、そこに生きる人々に寄り添いながらまちづくりを展開していく「地元学」について書かれたその本をむさぼるように読みながら、地域の人々と一緒にまちを歩くことを始めます。

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そんな加藤さんの呼びかけに地元の若者も「なんだか楽しそうだ」と集まってきました。「大学卒業後、東京で働いていたが、震災を機に被災した故郷に戻り地元の企業に就職した」という唐桑出身の三浦怜(りょう)さんは、今年6月からからくわ丸のメンバーと知り合い、11月に初めて仕事の合間をぬってまち歩きに参加しました。「最初は地元の友人の紹介で軽い気持ちで話し合いの場に出てみただけ。でも、外から来た同い年の若者が地元のために動いてるのを見て自分も何かしたいと思った。『こんな田舎なんもない』と思っていたけど、まち歩きの活動を通じて、魅力を再発見することもできるし、地域を元気にできる。この活動を続けていきたい」と話しています。

唐桑町のように、震災以前からもともと過疎・高齢化の課題を抱え、震災後に人口流出に拍車がかかってしまった地域は数多くあります。そのため、復興後のまちづくりは、インフラの整備といったハード面だけでなく、環境保全や地域福祉、防災力の強化、集団移転後の生活環境の整備などソフト面にも配慮し、長期的な視点で将来のまちを考えていく視点が重要視されるようになってきました。Civic ForceのNPOパートナー協働事業でも、復興のカギは、まちづくりに住民が主体的にかかわることととらえ、コミュニティーの活性化に寄与する団体へのサポートを続けてきました。

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「若者の意見など聞いてもらえない」「過疎化をくい止めることなどできない」。被災地に身を置くと、将来を案じて嘆きの声も聞こえてきますが、からくわ丸は域内外の協力者の力を借りながら、まちの活性化に向けて一歩一歩前進しています。そんなからくわ丸に対し、Civic Forceのパートナー協働事業では、まち歩きなどを運営する事務局へのサポートをはじめ、今後はまちづくりの専門家を招いた勉強会や他県のまちづくりの先進事例の視察など、活動をさらに発展させていくための支援を行っています。

からくわ丸の最終目標は、地域住民が「地域を守り育てていく当事者」としての認識を深め、唐桑を地域住民主体の元気なまちにしていくこと。「ひとりよがり」の活動にならないために、行政との連携も視野に入れています。8月に実施された気仙沼市主催の「夏休み子ども市民大学」では、まち歩きの活動が取り上げられることになり、からくわ丸は他の市内NPOと連携してまち歩き活動の全体的なコーディネートをしました。また、Civic Forceの中長期復興支援事業の一環で参加している気仙沼市観光戦略会議の作業部会には、からくわ丸も部会員として参加し、「まち歩き」などの活動で見えてきた課題や成果を、市の観光課と共有しています。

こうした将来のまちの発展を担う若い世代の取り組みに、気仙沼市まちづくり推進課や唐桑公民館、唐桑教育センターなども期待しており、気仙沼市の復興計画の重点事業の一つとして掲げられている「市民等との協働の推進」の若い担い手として注目されています。

Civic Forceでは、NPOパートナー協働事業をはじめ、今夏から実施中の中長期復興支援などの事業を通じて、個々の点と点を線で結び、面につなげていけるような戦略的な復興支援活動に力を入れています。

※けっから:「あげるから」の意。『KECKARA』は唐桑の情報を唐桑に向けて発信する雑誌。

動画:「まち歩き」について説明する「からくわ丸」の加藤代表