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活動報告

被災地を支援する

NPOパートナー協働事業

2011/11/22

"サンマ"がつなぐ故郷への思い――協働パートナー紹介

前回に引き続き、Civic Forceのパートナー団体である気仙沼復興協会(KRA)の活動を紹介します。11月に岩手県一関市の千厩仮設受託で実施されたさんま焼きのイベントは、なじみのある土地から離れて暮らす被災者にとって感慨深い催しとなりました。

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宮城県気仙沼市中心部から車で約40分、岩手県の南に位置する一関市・千厩(せんまや)仮設住宅は、海から離れ山の中を抜けた県境に程近いところにあります。千厩仮設住宅は、東日本大震災で甚大な被害を受けた気仙沼市が、一関市の支援を受け、主に気仙沼の被災者向けに設置し、11月現在、約150人が暮らしています。

震災後、一関市では、沿岸被災地からの被災者受け入れに力を入れており、行政サービスを整備するなど被災者が安心して暮らせるよう努めています。また、気仙沼市も一関地区に気仙沼市民向けのサポートセンターを立ち上げて相談員を常駐するなど、生まれ育った土地を離れざるを得ない被災者のケアに尽力しています。他方、これまで海とともに暮らしてきた気仙沼の人々にとって、隣県の内陸部の仮設住宅はあまり人気がなく、入居者抽選で第一希望が叶わなかった方が多く入居しているといわれます。

そこで、「ここの入居者のために」と、11月12日、千厩仮設住宅でサンマ焼きのイベントが開催されました。企画したのは、Civic Forceのパートナー団体である気仙沼復興協会(KRA)のほか、KRAとともに気仙沼の仮設住宅でお茶会などを開催しているSEEDS Asia。また、被災地での支援活動を続けるとちぎボランティアネットワークや気仙沼市社会福祉協議会も応援に駆けつけるなど、準備段階からにぎやかなものとなりました。

朝9時から始まった準備作業には、仮設住宅の住民も参加し、男性はサンマを焼く手製の七輪の準備を、女性は大根のおろし作業などを手伝ってくれました。そして、10時から始まったサンマ焼きの会には、仮設住宅の住民ら約100人が続々と訪れ、立ち昇る煙と香ばしい香に包まれながら、「今年初めて食べるサンマだ!」「地元の魚が特にうれしい」と、サンマを味わいました。

「今回のイベントでは、気仙沼産のサンマにこだわった」と語るのは、KRA福祉部事務長の塚本卓(たかし)さん。KRAは、気仙沼の仮設住宅で暮らす人々の孤立化を防止するため、各地でお茶会の開催などを続けていますが、千厩仮設住宅でのイベントは今回が初めてです。塚本さんは「千厩仮設住宅の方にもサンマを通じて気仙沼を思い、気仙沼とつながっていること、KRAはじめ気仙沼にいる人間も千厩の皆さんのことを考えていることが伝わればうれしい」と願って、このイベントを企画したそうです。気仙沼出身の被災者にとって、気仙沼産のサンマは、自分たちが生まれ育った場所との「つながり」を再確認する象徴でもあったようです。

また、仮設住宅の住民は「KRAのスタッフは、初めて会うけど懐かしい感じがする」「気仙沼出身の人だから信頼して話ができる」と言います。自らも気仙沼での被災体験を持つKRAだからこそ、共有できる被災者の苦しみや悲しみがあります。仮設住宅でのKRAのお茶会で班長を務める菅野恵美子さんと草野さおりさんは、「地元の人々と話すなかで、地道な活動を継続して行うことが一番重要だと気付かされました。これからは寒さが厳しくなるため、以前のように外でお茶会を開く機会は減りますが、規模の大小にかかわらず、これまで通りきめ細やかに相手の立場に立った活動をしていきたい」と声を揃えます。Civic Forceとの協働事業を通じて新規メンバーとして加わった4人も、20代の若さで仮設住宅を回り住民の方々と触れ合える活動にやりがいを感じているようです。今後は、松ぼっくりを用いたクリスマスツリー作りやタオルで作る動物など、一回の訪問で完成させられる小物作りを通じて、仮設住宅住民がささやかでも確かな達成感を持てる事業を実施していく予定です。

地元の人々をはじめ、被災地で活動する他団体からも高く評価されているKRA。気仙沼の復興に向けて重要な役割を果たす彼らのような活動が、地元の人々による主体的な復興活動として他地域へも波及していくことを期待しています。

 

sanma.jpg

 

(さんまは片面を7割、裏返して4割くらいの感覚で約15分ほど

焼くと食べごろになるとのこと)