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活動報告

被災地を支援する

NPOパートナー協働事業

2012/03/05

未来を話し合う「場所」を――協働パートナー紹介

変わり続ける被災地のニーズに対し、迅速かつ的確に応えることを目標に、2011年4月から続けてきたCivic Forceの「NPOパートナー協働事業」。復興期の現在は、第3期として、震災後に失われがちなコミュニティの再生を目指す支援に力を入れています。今回は、宮城県・南三陸町戸倉地区で、仮設住宅のコミュニティ活性化とソーシャルメディアを生かした世代間交流の場づくりに奔走する「戸倉復興支援団」の活動について紹介します。

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2011年3月11日の東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県本吉郡南三陸町。町内にある4地区のうち、罹災率76.8%と特に被害が大きかった戸倉地区は、震災後、そのアクセスの悪さから一時孤立状態となりました。

震災前、680世帯2,400人が暮らしていた戸倉地区の各集落は、起伏激しい山々の谷間に位置し、スーパーや飲食店などが集中する近隣の町へのアクセスが悪い地域でした。そのため、食料や生活物資を共同の倉庫に蓄えるなど、日々の不足を融通しながら住民同士が助け合って生きてきました。また、この地区では、広い居間や集会所をカフェとして利用するなど、人々が集まる“場”が大きな役割を果たしてきました。

しかしながら、震災の影響で、これまで共有スペースとして利用してきた保育所や小・中学校、公民館、集会所、駅、銀行ATM、郵便局、ガソリンスタンド、漁業組合出張所、コンビニなど、ありとあらゆる“場”が流出・離散してしまいました。

「日常を維持するため、通勤や生活用品の運搬・調達に時間が消費され、未来を話し合う機会が圧倒的に不足している。高台移転が完了するまでの数年間、都市の店舗やサービスに相当する“屋根のある場所”が必要」――そんな確信をもとに、活動を続けてきたのがCivic Forceのパートナーである「戸倉復興支援団」です。

東日本大震災をきっかけに、戸倉地区にゆかりのあるボランティアによって立ち上げられ、渡辺啓さんと厨(くりや)勝義さんを中心に、地元の若者が活躍。震災後の4月から、避難所の運営支援や在宅被災者の孤立状況調査、仮設住宅のベンチ設置、情報通信技術(ICT)やソーシャルメディアの活用などを通じて、戸倉地区のコミュニティの活性化を目指す支援を続けてきました。

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そうした中、注目したのが、昭和50年代から続く繭細工などの伝統工芸や地区住民の趣味・特技と、Webやソーシャルメディアとの“融合”です。2011年12月から開始したCivic ForceのNPOパートナー協働事業では、伝統工芸の技術などを持つ高齢者世代と、外部への発信力を持つ若年世代との両方が集まり、さらに、それまで個別に支援を行ってきた戸倉地区7仮設住宅団地をもつなぐ、新たな“場づくり”を目指しています。

具体的には、戸倉地区内に4軒の小屋を建設したり、トレーラーハウスなどで、新しいコミュニティスペースを設置し、そうした新しい場所や既存の仮設住宅団地などに、7つの仮設住宅の高齢者や若者を集めました。そして、高齢者が工芸品を製作し、それらの作品を若者がtwitterなどで販売するという、共同の取り組みを繰り返し実施。2011年12月から2012年2月までの3カ月の間に、こうした“場”づくりが進み、戸倉地区内で3件。また、コミュニティ内での情報共有や意見交換を助長するツールとして、50歳以下の世帯にインターネットを普及・活用を促進する取り組みを行い、7仮設自治会中5自治会がアカウントを設置するなど、仮設住宅間の物理的距離をソーシャルメディア利用によって補完する工夫もしました。

水戸辺自治会の繭細工作りに参加した年配の女性は「遠方の方に作品を知ってもらえてうれしい」と言います。他方、コミュニティスペースのイベントに参加した学生は「震災後に仲間と遊ぶ機会が減って困っていたが、会えるようになって良かった」と語ります。

年齢や異なる地域で暮らす老若男女が集い、コミュニケーションを図りながら共に工芸品を作成・販売するプロセスは、人々の新しい“生きがい”を生み出すとともに、地域の将来を見据えた自立復興につながっています。

借金や二重ローン、職の問題など、険しい復興の道のりを歩む被災者にとって、今最も必要なのは、住民同士の支え合いです。Civic Forceは、これからも人と人をつなぐ中間支援組織として、被災地の主体的な活動をサポートしていきます。

 

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(戸倉地区の女性たち)

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(繭細工の工芸品)

※戸倉復興支援団は3月11日より名称を変更し、「LAMB's(ラムズ)」として事業を継続して実施していく予定です。