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活動報告

被災地を支援する

NPOパートナー協働事業

2011/12/22

「漁業復興の足がかりに」――協働パートナー紹介

震災後、海はどのように変化してきたのか―――12月21日、仙台市民会館でシンポジウム「海と共に生きる―震災復興と森は海の恋人運動―」(後援:Civic Forceほか)が開催されました。主催は、Civic Forceのパートナー団体として、東日本大震災発生以降、専門家とともに気仙沼湾の水質水底生物調査を実施してきたNPO法人森は海の恋人です。100人以上が集まった会場では、半年以上にわたる調査の結果が公表されるとともに、これからのまちづくりについて討議されました。

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東日本大震災では、最高9メートル以上にも及ぶ津波が、沿岸部をはじめとする多くの地域を襲いました。他方、津波によって、海の中はどのように変化したのでしょうか。

Civic Forceのパートナーであり、長年、宮城県気仙沼市の唐桑町舞根地区で牡蠣の養殖を営んできた畠山重篤さんらNPO法人森は海の恋人のメンバーは、震災後の4月から、約10人の専門家で構成されるボランティア調査チームとともに、同地区の海底に沈んだがれきの調査や生物環境調査を実施してきました。

森は海の恋人は、「自然の“輪”から、人の“和”を育てよう!」をキャッチフレーズに、震災以前から環境教育、森づくり、自然環境保全の3つを柱に活動してきました。今回の震災では、多くの漁師が廃業を迫られる中、再び海と共に生きることを決意し、これまで続けてきた活動のネットワークを通じて、復興に向けた新たなまちづくりに力を入れています。特に、畠山重篤さんの息子さんである畠山信副理事長は、震災後、県内外からの復興ボランティアを受け入れつつ、気仙沼復興会議の市民委員として新たなまちづくりにかかわり、長年続けてきた“森は海の恋人運動”を、過疎化が止まらない小漁村の再生と津波災害からの復興まちづくりに反映していくことを模索しています。

こうした中、海の調査を始めた理由について、畠山重篤さんは「津波で海は死んでしまったと思ったが、海にはまだたくさんの生物が生息していた。これまで共に生きてきた海に何が起きたのか、専門家の目で見てもらい、漁業の復興のあしがかりになればと実施した」と話しています。また、各分野の研究者を集めて調査チームを立ち上げた京都大学名誉教授の田中克さんは、「研究者としてできるかぎりのことをしたかった。海の再生力を全世界に発信し、三陸地方とともに生きてきた人々の元気につなげたい」と言います

シンポジウムの第一部では、オーシャンファミリー海洋自然体験センターの海野義明代表理事のコーディネートのもと、「海の環境が津波から受けた影響と回復状況、養殖海域の安全性」と題して、今回の調査に携わった6人の専門家が登壇。がれきの状態や生き物が津波から受けた影響、環境の回復状況、水産物の安全性などについて、調査の結果を発表しました。(登壇者と調査の内容は以下の通り)

氏名(専攻)

所属

調査内容

田中克(森里海連環学)

京都大学名誉教授

生物環境モニタリングの趣旨説明

横山勝英(環境水理学)

首都大学東京准教授

海底がれき探査、海域の基本性状

山本光夫(環境化学工学)

東京大学特任准教授

海底泥の状態、海水の栄養塩と溶存鉄

吉永郁生(海洋微生物学)

京都大学助教

海洋微生物

西谷豪(沿岸海洋プランクトン)

東北大学助教

海洋プランクトン

益田玲爾(魚類行動学)

京都大学准教授

魚類と藻場

 

この報告を受けて、会場からは「石油コンビナートから流れた油は現在どうなっているのか」「国や自治体、他の研究所などの調査は進んでいないのか」といった様々な質問が寄せられました。そして、こうした調査は、国や県、市などからの委託事業に頼るだけでなく、個々の市民や研究者が自発的に行うことで、迅速かつ実態に即したデータを発見でき、ひいては地域の人々の手による、より主体的な復興にもつながる意義を語り合いました。

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(森は海の恋人の畠山重篤理事長)

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(舞根地区の海を調査した専門家が集結し、各専門分野のモニタリングの結果を報告しました)

 

 

第二部では、森は海の恋人の畠山信(まこと)副理事長と首都大学東京の横山勝英准教授が、「震災復興と森は海の恋人運動」をテーマに、三陸の新たなまちづくりに森・里・海のつながりという理念を用い、良好な養殖漁場を維持する意義を語りました。

また、津波の中を泳いで対岸に渡った畠山(信)さんは、自らの被災体験を振り返りながら被災時に撮影していた写真を披露。「いつもより船の進みが良いと思ったら、強烈な引き波に吸い寄せられた」と津波の第一波に飲まれ意を決して飛び込んだときの様子を語りました。その後、泳ぎついた大島では山火事に遭遇し、消火活動を手伝うことに。その数日後、自衛隊のヘリで気仙沼市内に戻り峠道を歩いて舞根に戻ったそうです。

壮絶な体験を経て何とか生き残った畠山(信)さんですが、「すべて流されてしまったけれど、もともと過疎化した地域を新しく生まれ変わらせるための機会ととらえたい」と、市民が主体的に復興まちづくりにかかわっていく大切さを主張しました。

Civic Forceは、これからも森は海の恋人のような、地域復興のキーパーソンとなりうる人々の活動を応援し、震災後の新しいまちづくりのモデル事業となる取り組みをサポートしていきます。


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(自らの被災体験について語る畠山副理事長[左])

 

 

 

 

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〈上〉2011年3月11日震災直前の舞根の海

〈中〉津波が来る直前に、船の上から撮影した海の様子

〈下〉峠を越え歩いて戻ってきた舞根の風景 

                       (畠山信さん撮影〉

 

 

森は海の恋人のホームページはこちら→http://www.mori-umi.org/