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2011/12/13

みんなで考える町の良さと未来の姿――「復興まちづくり勉強会」開催

Civic Forceは、12月10日、宮城県気仙沼市の唐桑地区で「復興まちづくり勉強会」を開催しました。勉強会とは、地元の人々が中心となって、各地で進む復興に向けた前向きな取り組みを共有するとともに、これからのまちづくりについて考える場です。ばらばらになりかけたコミュニティの絆を取り戻して、10年後、20年後を見据えた復興につなげることを目指します。

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「唐桑の良いところは、安心して暮らせるとこ」「山や畑、海の幸が豊富でおいしいもんがたくさんあるのもいいね」「祭りなどの行事もなかなかだよ」――12月10日、宮城県北東端に位置する海岸沿いの町、唐桑で、震災後初めて「復興まちづくり勉強会」が開催されました。集まったのは、唐桑町住民や市役所の職員、支援団体職員など86。復興に向けた他地域のまちづくりの取り組み事例を共有するとともに、地域の良いところを語り合い、これからのまちづくりについて考えました。

勉強会の舞台となった唐桑を含む複雑なリアス式海岸の入江は、豊かな漁場を育む一方、津波の波高を増し、多くの地域・集落に壊滅的な被害をもたらしました。しかし、震災から約9カ月が経ち、町が落ち着きを取り戻しつつある中、被災した土地をかさ上げして活用する試みや近隣の高台への移転を検討するなど、復興に向けた前向きな取り組みが各地で進んでいます。また、復興に向けて住民一体となって取り組むため、集会を開き、団体やグループを立ち上げる動きも活発化しています。

Civic Forceのパートナーの一つである日本建築学会も気仙沼市本吉町で「小泉地区明日を考える会」とともに、そうした住民主体のまちづくりを進めており、小泉地区は被災地の中でもいち早く住民総意で高台への集団移転を決断しました。今回の勉強会は、そんな小泉地区の取り組みをサポートしてきた北海道大学の森傑教授(日本建築学会会員)の知見と経験を、同じ市内で集団移転に取り組む唐桑の人々と共有しようと開催されました。

森教授は、1993年7月に発生した北海道南西沖地震で、壊滅的な津波の被害を受けた奥尻島の復興について調査を続けてきた研究者の一人です。奥尻の津波・集団移転については、特に建築分野の関係者間では知られていますが、最大の反省点は、被災前のコミュニティをどう継承するか、という議論・方法が十分に検討されなかったことにあります。集団移転を含め短期間で住宅が供給され迅速な復旧が進んだ一方、結果的に、住民が離れ過疎化が進んでしまいました。そして、当時から18年が経った今、奥尻ではそれまでの復興のあり方を振り返ってより良い復興の形があったのではないか、と考える住民もいます。

「反省的な知見に意義を見出し、奥尻では成し得なかったことを、東北で実現できるのではないか」。森教授の言葉は、コミュニティの継承と持続を望む地域の人々の心に届いたのではないでしょうか。勉強会では、森教授の講話の後、あたらしいまちづくりを考える第一歩として、唐桑の良い点はどこか、子どもや孫たちにどんな唐桑を残していきたいのか、などについて、8つのグループに分かれて協議しました。

長年唐桑で暮らす高齢の女性は、「みんな顔見知りでお互いによく知ってて、何かあれば助け合えるここが好き」と言います。また、唐桑で牡蠣の養殖業を営む40代の男性は、「きれいな海を残していくことが唐桑を守っていくことにつながる」と主張していました。このほか、「将来を担う子どもたちのために環境教育に力を入れよう」「仕事をつくり持続的に町を活性化させる取り組みが大切」「何か新しい観光の目玉をつくろう」と活発な議論が行われました。唐桑の人々は自分たちの町を見直し、未来の姿について一緒になって考え、「これからもみんなが集まって話し合う機会を増やしたい」と話しています。

また、今回の勉強会の開催は、気仙沼市や市内外のNPOの協力があってこそ実現できました。気仙沼市は、10月に震災復興計画を策定し、これからの復興に向けた大きな道筋を示すとともに、復興推進地域に関する説明会を市内の主要3地区で開催、11月からは集団移転に関する説明会を市内の各地で実施するなど、住民の声を緻密に拾い上げながら復興に向けた具体的な作業計画策定を進めています。

こうした市が進めるトップダウンの政策と、地元の人々の自発的な取り組み、この両輪が重なり合ってこそ、より確かな復興の道へとつながっていくはずです。中間支援組織であるCivic Forceは、これからも人と人をつなぎ、地域と地域を結ぶことで、組織や団体の壁を越えたインパクトのある支援を目指します。

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唐桑地区で初めて実施された「まちづくり勉強会」の様子