災害支援のプロフェッショナル Civic Force(シビックフォース)

HOME 活動報告 被災地を支援する 東日本大震災支援事業 NPOパートナー協働事業 6月6日(月) 心の専門家・臨床心理士の必要性―協働パートナー紹介

活動報告

被災地を支援する

NPOパートナー協働事業

2011/06/07

6月6日(月) 心の専門家・臨床心理士の必要性―協働パートナー紹介

Civic Forceは4月から、NPOなど7団体と「パートナー協働事業」を展開しています。同事業は特定地域にとらわれず、専門性のあるNPOと連携して生活再建支援を行う枠組みです。今回は、Civic Forceのパートナーとして、岩手県陸前高田市・大船渡市・住田町など気仙地域を中心に支援活動を展開する「NPO愛知ネット(愛知県安城市)」をご紹介します。

============

「目の前で娘が津波にさらわれた」「一度は津波にのまれたが、命からがら逃げることができた」「避難した高台から自宅が、生まれ育った町が流されるのをただ見届けることしかできなかった」

3月11日。あの日を境に人生が変わったという人がたくさんいます。大地震と津波に襲われ、救助されるまでに味わった絶望感。大切な人を亡くした喪失感。大きな災害の後は、多くの人がPTSD(心的外傷後ストレス障害)になる可能性があると言われています。

通常はショックな出来事を体験しても、時間の経過とともに心身の反応は落ち着いて記憶は薄れていきます。ですが、あまりにもショックが大きい場合は、心に大きな障害を残すことがあります。地震や津波に襲われた時の様子をありありと思い出すフラッシュバックはPTSDの代表的な症状。また、テレビのニュースや水の音、海の近くに行くなど地震や津波に関連するものごとに対して強い心理的苦痛を感じたり、回避行動をとったりと、その症状はさまざまな形で現れると考えられます。実際に、ある避難所で激励のために開かれた和太鼓コンサートでは、太鼓の音の圧力で津波が押し寄せるシーンを思い出して、気分が悪くなる人が続出してしまうことがあったそうです。

一方で、財産も家族も失ってしまった中高年の被災者の間では、住まいや雇用を確保できる当てもなく、無気力に陥っているという報告もあります。災害で受けた被害や避難生活でのストレスも多く、うつ状態になるケースもあり、被災地各地から心のケアの重要性を説く声が上がっています。

うつ状態やPTSDの治療には薬物療法のほか、認知行動療法やカウンセリングなども有効とされています。被災地には現在、うつ状態やPTSDにかかる恐れのある予備軍である人々が多数存在しています。発症を未然に防ぐため、被災者の心の内に耳を傾けることができる心理カウンセラー、つまりは「心の専門家」である臨床心理士の派遣要請が各地から集まっています。

高まる心のケアのニーズに対して、カウンセラーはどのように対応しているのでしょうか。

日本臨床心理士認定協会によると、資格試験を始めた1988年12月以来、臨床心理士の資格を得た人は累計で23,000人を超えています。今回の震災を受け、日本臨床心理士会と日本心理臨床学会は3月23日に「東日本大震災心理支援センター」を設立しました。被災した地域の各県臨床心理士会をサポートするほか、日本赤十字社のこころのケア班や、国境なき医師団の要請を受け、臨床心理士をボランティアとして派遣しています。

Civic Forceの協働パートナーであるNPO愛知ネットも、日本臨床心理士会や愛知県の臨床心理士会と連携して、4月から臨床心理士を岩手県大船渡市に派遣。避難所で巡回カウンセリングのほか、トレーラーハウスを設置してカウンセリングルームを開設して、活動を始めています。ただ広範囲にわたる今回の災害では、あまりにも多数の人々がカウンセリングを必要としているため、そのニーズに応えきれていないのも現状です。

DSC02320.JPG

(このトレーラーハウスを拠点に気仙地域の支援を展開するNPO愛知ネット)

明日は、NPO愛知ネットが直面する心のケアの難しさをご紹介します。