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活動報告

被災地を支援する

2017/03/08

【熊本地震】保育の現場を支える新しいプロジェクト始動! --NPOパートナー協働事業

前回に続き、2月26日に熊本で実施されたシンポジウム「『質の高い保育』こそが一番の防災になる〜あそびをつくる、新しい社会的子育てにむけて」の様子をお伝えします。

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心強かった派遣保育士の存在

続く第二部では、熊本子ども・女性支援ネット(KCW)が実施する「社会的保育実践者派遣プロジェクト」の役割に焦点を絞り、被災地に派遣された保育士と、受け入れ先となった保育園の保育士が登壇しました。

保育士2年目で熊本地震を経験したはけみや保育園の岡村麻美さんは、自らも被災し車中泊をしながら、子どもたちへの保育に徹したました。同時に避難者へ食糧や入浴の支援なども続け、「経験の浅い若手ばかりで正直、大変だった」と振り返ります。

こうしたなか、プロジェクトの一環で10月に東京・お茶の水いずみナーサリーからベテラン保育士が派遣され、約1ヶ月半、ともに子どもたちの保育を担い、客観的な視点でのアドバイスもありました。岡村さんは「おかげで肩の力が抜けて、子どもたちに自然と笑顔で接することができた。本当に心強かった」と言います。

次に、大津白川保育園からちょうよう保育園大津キッズルームに派遣された主任保育士の田上由香理さんが登壇。避難所と化した保育園の当時の環境面・衛生面の課題を指摘しつつも、「発災直後からさまざまな工夫や苦労を重ねてきたスタッフたちの限界を知り、その上で問題を解決していく姿勢が大切」と強調します。そして、派遣される人員に必要な条件として、①ある程度の経験や実力を有し、現場のスタッフが安心して休めるような保育者、②客観的に状況を把握し、伝えられる保育者、③現状を否定せず受入園のスタッフや子どもたちに寄り添える保育者、という3つを挙げ、現場にとって本当に有益な知恵や情報を提供できれば、環境を改善していけると語りました。

 

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「子どもの安全」と「避難者の受け入れ」 どちらを優先するか

その後のフリーディスカッションでは塩崎准教授のコーディネートのもと、建川さん、山並さん、KCW共同代表の藤井さんが登壇し、避難所を運営するにあたってのセキュリティーの課題について議論。「東日本大震災のとき、多くの首都圏の保育園では、子どもたちの安全を優先し、避難者への開放はしなかったが、熊本の保育園の対応は違った。どう考えてきたか」という塩崎准教授の質問に対し、登壇者からは「正直なところ避難者のなかにどんな人がいるか把握していなかった」との声もありました。

また、シンポジウムでは、東日本大震災で幼稚園バスに乗った子どもたちが亡くなり裁判になった前例にも触れました。震災があったとき、誰が子どもの命を守り責任を負うのか、全国的にも注目される保育の現場の社会的役割とその難しさを改めて考える貴重な機会となりました。

閉会の挨拶でKCWの藤井さんは「熊本だからこそ実現できたこの仕組みが、今後日本全国に広がる第一歩になることを願っている。道のりは長く厳しいけれど、いざというとき協力し合えるように、日々のつながりを大切にし、日頃から子どもや女性が安心できるネットワークを作っていきたい」と締めくくりました。

Civic Forceでは引き続き、被災した地域の親子を支え、日本の保育現場の発展にもつながるKCWの取り組みをサポートしていきます。

 

熊本子ども女性支援ネット×Civic Force

被災地の中長期的な復興を後押しするCivic Forceの「NPOパートナー協働事業」第1期では、被災した女性・子どもたちの心のケアや関係団体のネットワークづくりに尽力する「熊本子ども女性支援ネット」をサポート。続く第2期では、被災地近隣の市町村や他県からベテラン保育士を派遣して新人保育士などを支援する「社会的保育実践者派遣プロジェクト」を行い、保育現場の混乱を最小限に抑え、不安定な子どもたちや家庭の回復を後押ししています。