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被災地を支援する

2019/01/15

【西日本豪雨】役目を終えた最後の避難所「まきび荘」ーNPOパートナー協働事業

西日本豪雨で被災した岡山県倉敷市真備町の避難所「まきび荘」が、2018年12月、その役目を終え、まきび荘へ避難していた人々は、修繕された自宅や仮設住宅などへ移りました。被害が大きかった岡山、広島、愛媛3県では、最大で4万人以上が避難所に身を寄せていましたが、豪雨から5カ月を経て、まきび荘を最後にほぼすべての避難所が閉鎖されたことになります。

まきび荘は、もともと地域の高齢者が集う老人福祉センターでしたが、豪雨の影響で昨年7月9日から休館。8月下旬から避難所として開設し、市の職員やまきび荘スタッフ、内外の支援関係者らが協力しながら、多い時には40人以上を受け入れてきました。

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「”福祉的避難所”と呼ばれるまきび荘には、高齢者や高血圧の方、発達障がい児や赤ちゃん連れの親子など配慮が必要な方が多く避難していました」。こう話すのは、Civic Forceのパートナー「九州キリスト災害支援センター」看護部の山中弓子さん(写真右)です。看護師として東日本大震災や熊本地震の被災地でも活動してきた山中さんは、市の要請を受けて、まきび荘の初期段階から運営のサポートを任されてきました。

災害時の避難所運営は本来、市の職員が担いますが、他市町村からの応援職員や専門のNPO団体などもサポートに入ります。しかし、被災から1カ月以上経って設置された小規模のまきび荘は注目が集まらず、支援の手が圧倒的に不足していました。通常業務をまわしながら交代で避難所運営に携わっていた職員らの負担を少しでも減らせるよう、山中さんは避難所運営の経験を生かしながら昼夜サポートを続けました。また、災害看護支援機構と連携して保健師や助産師、看護師などの専門職を24時間体制で配置するとともに、人道援助の最低基準を定めた「スフィア基準」に基づき、感染症対策やトイレ・浴室の環境改善、子どもたちの心のケアなど「できることから改善していった」と言います。

そうしたなか、山中さんの心配事は、避難者の「食事」でした。避難所に支給される食事は、朝・昼はパンとおにぎり、夜は弁当が続き、栄養の偏りや塩分の取りすぎなどが懸念されました。そこで、山中さんは企業やボランティアの協力を得て、避難所内の調理室を活用しながら野菜メニューを追加提供するなど工夫をこらしました。しかし、糖尿病患者など一人一人に配慮した食事までは手が回っていませんでした。

「避難所での不摂生はその後の生活にまで影響を及ぼします。被災した皆さんは遠慮してほとんど要望を出してきませんが、災害時であっても疾患や年齢、体調に配慮した食事が必要です」。これまで他の被災地でも避難所の食事の問題点を目の当たりにしてきた山中さんは、まきび荘の避難者のために、栄養面の改善を図りたいと願っていました。

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そして、10月、Civic ForceのNPOパートナー事業では、九州キリスト災害支援センター看護部への支援を通じて、避難所の環境改善と食生活の改善に役立つ取り組みを開始しました。不足しがちなビタミンやミネラル、タンパク質などの栄養素を補給できる汁物や、インスタント麺と一緒に食せる乾燥野菜、減塩・低糖質の低カロリーのパンやおにぎりなど、できるかぎり一人一人の健康に配慮した食事を提供。避難生活が長引くにつれてインスタント食品など簡易的になりがちな食事を、一方的に与えられるのではなく、自分でつくったり選んだりしてもらえるよう心がけました。

まきび荘の食事が劇的に改善され、利用者からは「野菜がたくさん食べられてあたたかい汁物はうれしい」「乾燥野菜はカサが増してしっかり食べた気になれる」と喜んでいました。「避難所を出てからも栄養に気をつけたい」と語ってくれる人もいました。

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避難所としての役目を終えたまきび荘は今、高齢者のための多彩な講座が開かれるなど、地域住民の交流の場に戻りつつあります。しかし、甚大な被害を受けた真備町には、避難所を離れても仮住まいの人々がたくさんいます。山中さんは、まきび荘での役目を終えた後も、被災地での活動を続けていく予定です。

ばらばらになってしまったコミュニティの再建のために、被災地の復興はこれからが正念場です。