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活動報告

被災地を支援する

2017/09/07

【熊本×東北×韓国】南阿蘇村で見る・聞く・撮るーー観光復興応援ツアー@熊本(前編)

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Civic Forceは、8月28日から7泊8日の日程で、学生向けの研修プログラム「観光復興応援ボランティアツアー」を実施しました。今回の旅のテーマは「復興」と「観光」。東北から7人、韓国から8人の学生が参加し、熊本地震で被災した3つの地域(南阿蘇村、熊本市、山都町)を訪問しました。

前半2日間で、地震の被害にあった地域の人々や復興支援に取り組む地元企業・NPOなどの話を聞き、それらの情報をもとに後半の4日間で、3地域に分かれて熊本の復興状況や観光資源を発掘し、広く発信するための素材集めに奔走しました。また、プログラムでは福岡県朝倉市で、がれき撤去や家屋の清掃などのボランティア活動も行いました。

(今回の企画は、Civic Force東日本大震災支援事業「夢を応援プロジェクト」と、熊本地震「NPOパートナー協働事業」のコラボレーション企画です。NPOパートナー協働事業では、韓国で防災ネットワークの構築に取り組む「A-PAD KOREA」と協力しています)

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熊本地震の記憶、語り継ぐ学生にインタビュー

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「熊本にはゆかりがない。だからこそ来ることができた」。プログラム最終日の9月4日、全体発表の場でこう振り返ったのは、宮城県出身の大学2年生、長岡沙羽(さこ)さん。6年半前の東日本大震災で被災し、以来震災の報道やボランティアの情報を避け、”あのとき”の記憶と向き合うことができないでいたと言います。しかし、今回のツアーの案内を見て、「今度こそ被災地に足を運び自分にできることをしたい」と参加を決意しました。

長岡さんらは、プログラムの2日目に崩落した阿蘇大橋や土砂崩れで家々が埋まってしまった地区などを訪問。8月31日からスタートした地域別のグループ取材では、南阿蘇村チームの一員として、再び南阿蘇村を訪れ、韓国人学生らとともに震災後に再開したホテルやレストラン、市役所などをまわってインタビューしました。

長岡さんにとって、特に印象深かったのは、熊本地震で友人や先輩を失った東海大学南阿蘇キャンパスの農学生の話。熊本地震でアパートが倒壊し3人が亡くなったニュースは知っていましたが、仲間の死に直面したり、足を切断しなければならなかった学生たちのつらく生々しい話を耳にし、「客観視できなかった」と言います。他方、生き残った東海大の学生たちは「実体験を語り継ぐことで災害を身近な問題としてとらえなおしてもらいたい」と、2016年9月から地震の体験を伝える「語り部ツアー」を続けていて、そんな同世代の姿に「感銘を受けた」と言います。

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写真家に聞く、復興の課題

また、南阿蘇村では、地震で変わり果てた故郷を撮り続ける写真家の長野良市さんにも話を聞きました。長野さんは、阿蘇大橋の崩落や草原がえぐれて赤土がむきだしになった阿蘇五岳など、生々しい地震の被害を伝える『ゼロの阿蘇』という冊子を出版。一般社団法人「九州学び舎」を設立して、南阿蘇村のまちづくりや子供向けの体験学習、観光商品の開発、情報発信などの活動にも取り組んでいます。

長野さんによれば、南阿蘇村では被災した地域とそうでない地域とが「0と100ほどの差」。家を失うなど被害を受けた人の生活は厳しいけれど、心の傷は見えにくい。他方、近隣に住みながら被災していない人たちには、心の傷までは理解することができず、人々の心が一つではないと話してくれました。

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「長野さんの話を聞いて、コミュニティーの分断をくいとめるためにどうすればいいか、もっと分析したいと思うようになった」というのは韓国の学生、ダウンさん。「僕たちが人々に会ってたくさん話を聞かせてもらったように、旅する人が地域の人と密なつながりをつくることができれば、観光はもっとおもしろくなる。観光客が増えれば南阿蘇村が一つになるきっかけにもなるかもしれない」。こうした思いから、南阿蘇村チームでは、観光スポットだけでなく、それぞれの”復興”に向けて生きる人々に焦点を当てた取材と、写真・動画の素材集めを行いました。

学生たちが集めた写真や動画は、近日中にSNSなどで広く公開する予定です。特に韓国の学生たちは「1人1万人」の観光客を熊本に呼び込む目標を掲げていて、韓国国内では年内に書籍の出版も計画しています。

 

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後編では、山都町チーム、熊本市チームの取材活動についてご紹介します。