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被災地を支援する

2014/04/21

【東日本大震災支援】地域活性化の課題と原発避難者の受け入れ(前編)

東日本大震災に伴う福島第一原発事故の影響で、県外への避難を余儀なくされている人の数は、2014年3月末現在、約4万7,000人。うち80%以上は見知らぬ土地で新生活を送っていると言われます。いつかは故郷に戻りたいという人、生活を安定させるために新しい生活拠点を定めざるを得ない人、さまざまな思いを抱えながらいずれも厳しい現実を突きつけられています。

こうした複雑な思いに応えていくためには、帰還支援をサポートするだけでなく、故郷を離れて新しい生活を始めた人々を県内外の人々が支えていく勇気と、そのための支援策が必要です。今回は、Civic Force中長期復興支援「NPOパートナー協働事業」の枠組みでサポートしているnina神石高原の取り組みについて紹介します。

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resizecredit入り407336_288676344525842_586516876_n_edited-1.jpg山陽新幹線・山陽本線「福山」駅から車で約1時間。標高400~700メートルの高原地形に位置する広島県北東部の神石(じんせき)郡神石高原町(写真)は、総面積38万㎢のうち山林が8割を占め、年間20万人が訪れる国定公園「帝釈(たいしゃく)峡」や、レジャー施設仙養ケ原など、雄大な自然に恵まれた町です。一方、この広大な土地で暮らす人口は約1万人。日本全国の多くの地方が抱える課題と同様に、少子高齢化が進み、産業や観光の振興、施設・生活基盤の整備など、過疎化を食い止めるための具体策が求められています。

そんな過疎地域で、今、福島第一原発事故の避難者を受け入れるための新しいプロジェクトが始まっています。中心となっているのは、2013年5月に設立されたNPO法人「nina(にいな)神石高原」です。神石高原町の元副町長、上山実さん(写真左)が代表を務めるこのNPOは、行政関係者や地域住民など、まちづくりの推進や東日本大震災の被災者支援などに強い関心を持つメンバーで構成されています。

resizeDSC07988.jpg「nina(にいな)とは備後弁で“新しい”という意味。原発事故で被災し、ふるさとを離れて避難生活を送る方々が、神石高原で暮らしながら、共に過疎高齢化の進む町を新しく再生させたいとの思いが込められている」と話す上山さん。

設立のきっかけは、福島第一原発から30キロ圏内に含まれる旧相馬藩(相馬市、南相馬市、浪江町、双葉町、大熊町)の第34代目藩主である相馬行胤(みちたね)さんが、2013年3月に神石高原町に移住したのがはじまりです。相馬さんは「旧相馬藩の地域は、今も続く『相馬野馬追』という行事を通じて地元愛が強いが、原発の影響でばらばらになってしまった。相馬・双葉地域からの避難者が地域のまとまりを維持しながら生活再建できる道を探れないか」と、自ら先陣を切って家族とともに神石高原に移ったのです。nina神石高原は、そんな相馬さんの活動もバックアップしています。

Civic Forceは、東日本大震災支援「NPOパートナー協働事業」の枠組みで、nina神石高原の取り組みをサポートしています。2013年夏から開始したこのプロジェクトでは、これまでに放射線量の比較的高い地域に暮らす住民の生活環境や移住希望に関する調査を実施してきたほか、福島県内避難者に加え、すでに広島県などで避難生活を送る人々や彼らをサポートするNPOや行政と協力し、神石高原町の紹介や移住説明会などを続けてきました。

半年以上にわたって続けてきた活動のなかから改めて浮き彫りになったのは、避難先の住居の確保や職探しの難しさ、子どもの就学、介護・福祉サービスなど、避難先でさまざまな課題に直面する避難者の厳しい現状です。避難先の地域で差別を受けるケースもあり、避難先の地域住民との摩擦を減らす策も必要です。

後半は、nina神石高原の調査によって明らかになった避難者の厳しい生活環境と、彼らを支えるための取り組みについて、紹介します。