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被災地を支援する

2013/05/29

【NPOパートナー協働事業】被災者に寄り添う"心の専門家"

変わる被災地のニーズにより広く対応するため、2011年4月から続けてきたCivic ForceのNPOパートナー協働事業。震災発生から2年以上が経過し、大切なものを失った悲しみや将来への不安から、心理的な困難や悩み事を抱える被災者が増えるなか、被災地でこころのケアや臨床心理士の育成・指導を続ける「岩手県臨床心理士会」の活動についてお伝えします。

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東日本大震災発生から2年以上が経過し、宮城県や岩手県の被災地ではガレキ撤去や公共インフラの復旧、災害公営住宅の建設など、復興に向けた歩みが目に見える形で進んでいます。他方、震災で大切な人を亡くしたり生活環境が大きく変化するなど、複雑な問題を抱える被災者の心的影響は計り知れず、こころのケアを必要とする人の数はこれまで以上に増えています。

resizeDSC02979.jpg岩手県の仮設住宅などで被災者のこころのケアを続ける岩手県臨床心理士会によれば、「2年を過ぎた今になって、不登校になったり非行などの問題行動を起こすようになったりと、不安定になる子どもが増えている」と言います。子どもの不安や変化を受け止める周囲の大人たちが大きなストレスを抱えていることで、問題が複雑化しているケースも増えています。実は、阪神淡路大震災でも、3年以上が過ぎてからこころのケアを必要とする被災者が増えるなど、震災から時間が経って身体的な安心や安全と日常生活の確保に伴い、心の問題が浮き彫りになるケースが多いと言われています。

また、仮設住宅からアパートなどに引っ越した人の中には、転居先のコミュニティにうまくなじめず引きこもりがちになるケースもあります。仮設を出る人、仮設に残る人、双方に負担がかかっています。

こうした状況の中、日々被災者に寄り添い、心的サポートを続けている支援者のひとつに、臨床心理士がいます。臨床心理士とは、“心の問題”を抱えた人に接し、その人の特徴や状況に応じた心理的援助法を用いて問題解決への手助けをする「心の専門家」です。2011年4月現在、財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する臨床心理士は、約2万3000人で、厚生労働省発表の県別医師数によると、臨床心理士数は、東京都で約3,000人に一人、宮城県では約7,000人に一人、岩手県では約9,000人に一人の割合となっており、岩手県は全国平均を大きく下回っています。同県の面積は北海道に次いで2番目に広く、また、岩手県内の臨床心理士は全体の7割が盛岡市とその周辺に集中しています。こころのケアのニーズが高い沿岸被災地は被災前から医療資源が不足しており、臨床心理士の存在が他県と比較して更に重要となっています。

そこで、被災県における“職能集団”として、臨床心理士135人の会員で構成される岩手県臨床心理士会は、発災直後から沿岸被災地に行き県や市町村行政、民間団体などと協働しながら多様なこころのケア事業を続けています。次回は、被災者の心に向き合う岩手県臨床心理士会の活動をご紹介します。