【令和6年能登半島地震】発災から5カ月“緊急期”が続く被災地の現状
今年元日に起きた能登半島地震から、約5カ月が経ちました。報道や人々の関心が薄れる中、被災地の状況はどのように変化しているのでしょうか。能登半島から、被災地の状況をお伝えします。
石川県内の水道管は東日本大震災の7倍のダメージがあったとされ、インフラ復旧のネックとなっています。地震発生当初、石川県珠洲市では、市全域の4,800戸が断水しました。発災から5カ月が経った今、73%にあたるおよそ3,500戸が復旧しましたが、実際に水道が使えるのは2,100戸程度です。
Civic Forceは、デジタルプラットフォーム「Good Links」を通じて被災地への物資支援を続けていますが、支援団体が実施している物資支援では未だに水とトイレの凝固剤のニーズが非常に高い状況となっており、住民の方々が日常生活を送る上でのストレスは計り知れません。
珠洲市内では、水が出ないことにより自分で調理ができないため、炊き出しが必要な方もいます。
珠洲市はこれまで、在宅避難者を含め希望する被災者すべてに弁当の配布を続けていましたが、5月15日以降は避難所(自主避難所含)で暮らしている人だけ配布の対象にすると発表。水が使えないなどの理由で調理ができない人は、2週間に1回、申請すれば弁当の配布を受けられますが、珠洲市の中心部まで毎日受け取りに行く必要があります。そのため、在宅避難の高齢者にとっては負担が大きくなっています。
仮設住宅の建設も進められていますが、水道が復旧しているわけではないため、仮設住宅に入居しても、水を自由に使える見込みはまだたっていません。
珠洲市で物資支援や炊き出しなどの支援活動を続けている団体と協議
輪島市門前町は、黒い瓦屋根や板張りの壁など伝統的な街並みが残る地域です。今回の地震によって、多くの建物が倒壊し、その後の余震で倒壊の危険性が高まった建物もあります。多くの建物に応急危険度判定「危険」の赤紙が貼られていました。
町内の半数以上の方が町外に避難しており、4月の段階でようやく土・日などの休日に町外から戻ってきて自宅の片付けを始めた方もいます。
輪島市門前町
被災した建物の修復や片付け作業のニーズは増え続けています。高齢者が自力で行うのは難しいため、現在、県外から入った支援団体などがボランティアを派遣するなど細々とサポートを続けています。しかし、そうした支援団体も人手が不足しています。
避難生活が続き今後の見通しがたたない中、被災者の皆さん心身の疲労がたまってきています。また、1月1日の発災から、継続的に支援に入っている支援団体のスタッフにも疲労がみられます。スタッフの宿泊場所を確保できず県内外から人材を集めて常駐することが難しい点も今回の能登半島地震の支援を難しくしている要員の一つです。厳しい人手不足の現状に、「支援者支援」の必要性が求められます。
輪島市から車で1時間ほどの場所にある七尾市では、和倉温泉の営業が再開できず、雇用の損失による被災者の方への影響が懸念されます。
また、地域の介護施設が閉じたままで再開されず、高齢者が長時間自宅にいることによって家族間でフラストレーションがたまり、DV(家庭内暴力)につながるケースもあります。
また、在宅避難者の中には、地震で傾いた家に住み「めまいが続いている」という人もいます。しかし、支援の要望をだすことができず、心身の負担が解消されることなく入院するというケースもみられました。
七尾市の家屋。地震で傾いたままの状態で、発災当初から時間が止まったかのように飾られた正月飾り
七尾市で福祉事業を運営する方は、「支援者から見えない場所にいる方々の支援は、福祉施設にいる方々への支援とは違う困難さがある。見えない場所にいる被災者の方の状況を知ろうとすることが大切」と言います。
このように、避難所で生活する被災者の方だけでなく、自宅に避難されている被災者の方(在宅避難者)にも支援を届ける必要があり、物資配布を通じてコミュニケーションの場を設ける活動に力を入れる団体もあります。
県内では各所で仮設住宅の建設・入居が始まっています。地域により異なりますが、抽選で入居する地域の方々は、仮設住宅の新たなコミュニティで生活を始めることになります。
また、能登半島には伝統的な住居が多く、代々受け継がれてきた一軒家に住んでいた方々は、長屋暮らしを経験したことがなく、仮設住宅での暮らしに不安を感じる方もいます。
今後、被災者の方々の生活が変化する中で、新たな課題やニーズが見えてくることが予想されます。
能登では、「2011年3月11日の東日本大震災で被災した東北の経験を学びたい」など、東北とのつながりを求める声もあります。Civic ForceのNPOパートナー協働事業では、東北への支援も継続していることから、被災地と被災地をつなぎ、過去の経験や教訓を生かす取り組みも応援しています。
今も緊急期の状況が続く能登へ、引き続き、皆さまのあたたかいご支援をよろしくお願いいたします。
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