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【Vol.04】静岡県袋井市(前編)

INTERVIEW  2012/08/09

袋井市長 原田英之さん

袋井市長 原田英之さん
太平洋沿岸に面し、豊かに広がる田園地帯と茶畑が美しい静岡県西部のまち、袋井市。東海地震に備える防災力強化の一環で、企業やNGOなどとの連携を進め、2008年にCivic Forceとも協定を締結。大規模な災害が発生した場合を想定し、平常時から供給物資の備蓄や派遣人員計画の準備、訓練の実施、避難所での被災者支援など多方面で協力してきました。2001年の就任以来、一貫して減災に取り組む原田市長に、東日本大震災後の行政の防災対策のあり方や民間との連携の意義について聞きました。
「この教訓を確実に未来に受け継ぐ責任がある」
袋井市は、日本国内の自治体の中でも、特に「減災」に力を入れ一貫して地域の地震対策に取り組まれています。これまでどのような対策を行ってきたのでしょうか。
ずいぶん前にさかのぼりますが、1976年に初めて東海地震説が発表され、袋井市は「地震防災対策強化地域」に指定されました。以来、補助金など支援制度の整備や自主防災組織の設立などさまざまな地震対策を講じてきました。また、1995年の阪神淡路大震災をきっかけに静岡県が「第3次地震被害想定」を発表し、袋井市の被害想定は「面積の52.7%が震度6強、25.7%が震度7」と拡大されていて、これまで以上に「市民の命を守ること」が緊急の課題となりました。

これを受けて、2001年に防災会議を開催して「減災」の方針を掲げ、「公共建築物の耐震対策」「一般住宅の耐震対策」「防災関連施設・設備の整備」「自主防災組織の活動強化」「医療救護の対策」「市民への広報啓発」「ライフライン等今後の対策」という7つの主要施策を打ち出し、多方面から減災に取り組んできました。

また、02年に見直された「地震防災対策強化地域」が広がった影響で、これまで見込んでいた愛知県からの応援や自衛隊、警察、消防などの派遣もすぐには望まれないため、NGOや企業などと連携して独自の連携ルートを構築してきました。
東日本大震災の支援では、Civic Forceへの後方支援や宮城県・岩手県の行政支援などいち早く動かれました。
発災後、袋井市の被害状況などを確認し、深刻な被害はないという報告を受けて、すぐに被災地へ向かうことを決めました。普段から現場へ行くよう徹底してきましたので、早く動くということは、私も派遣されるスタッフも何の抵抗もありませんでした。
311を機に、防災の取り組みは変わりましたか?
今回の震災を機に、市として地震対策の見直しを行い、7つの主要施策に加え「津波被害」「地盤災害(液状化被害)」「原子力災害」という3つの項目を新たに追加しました。

また、新たに元自衛官を採用しました。袋井市には、市の災害対策本部の支部が19地区にあり、各地区には約4,000人前後の人が住んでいます。袋井市の地震対策は、市民と行政が一緒になって意見交換会や対策会議を行っていますが、各支部をうまく動かすためには市のリーダーシップが重要です。今回の震災支援で訪れた被災地の避難所を見ても、まとめ役の裁量が、避難所運営に大きく影響すると感じました。そこで、作戦の立案や人の動員の経験を持つ元自衛官が、その手腕を活用していち早く防災計画を練り、避難誘導を現実的に実施するために、プロの知識と経験を導入したのです。

このほか山梨の大月など、近隣や遠方やのまちと新たに災害支援協定を結びました。
災害時の緊急対応について、市の役割と、CFのような民間が持つ役割はそれぞれ異なります。官民連携のメリットをどのように考えていますか?
災害後、「自助・共助・公助」という言葉が繰り返し使われるようになりました。「自助=自らの命は自分で守る」「共助=自らの地域はみんなで守る」「公助=それでもだめなら税金に」――この考え方こそ、私はすべての行政の施策に入れ込んで発信し、市民みんながいざというときに備えておくことが、何よりの防災対策だと思っています。

一方、自助・共助・公助というのは、それぞれ割り切れるようで結構難しい。どの自治体よりもぬかりなく防災対策を図ってきたつもりでしたが、たとえば、災害発生後に訪れた東北の被災地では、行政の職員が一カ月以上、市役所や避難所に泊まり込みで働いていたことに驚きました。「市民が大変なときに、市の職員も避難所に定住して働くのは当然」という“感覚”が定着していたことは実は想定外でした。一方、震災時は市の職員も家族が被災したり精神的に痛手を負い、ストレスを抱える場合も多くなると思いますが、それを自主的に軽減するというのは、怠けているように映ったりなかなか難しいのではないかと感じています。そうしたなか、被災地外からCivic Forceのような民間の別組織がサポートに入ってくれると、それだけでストレスが軽減されることがあります。災害のときに、“異質の要素”が入ることは良いことだと思っています。

また、行政や既存の仕組みであれば、100人いるところに99個のパンは配れない、ということになりがちです。でも、緊急時にはそういうやり方では良くない。そこで、NGOの皆さんに期待するのは、“潤滑油”として、隙間にうまく入ってやってくれること。行政の仕事を100%手伝ってもらう、ということではなく、自助共助公助の隙間に積極的に入ってきていただきたいのです。

これまで協働で続けてきた防災訓練を通じて、職員や市民の防災意識は高まったと言えます。それは、これまで毎年、Civic Forceと連携して防災訓練などを続け、災害対策を身近に感じるようになっていたことが大きい。CFとの防災訓練は臨場感があり、そういう意味ではCFという身近な存在が大きかったと思います。いつでも動く、という心構えが私たちの中にも備わっています。

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上から順に①原田市長、②袋井市とCivic Forceとの勉強会の様子、③原田市長とCivic Force代表理事との対談、④袋井市主催の住民防災集会で東北支援事業について説明するCivic Forceスタッフ ⑤原田市長とCivic Force代表理事

後編へ続く

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