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緊急即応体制を創る

東日本大震災を振り返る

【Vol.02】株式会社 高橋ヘリコプターサービス(後編)

INTERVIEW  2012/03/05

代表取締役社長 高橋雅之さん

代表取締役社長 高橋雅之さん
2011年3月11日、震災発生直後にヘリを飛ばし、Civic ForceやパートナーNPOとともに被災地へ向かった高橋ヘリコプターサービス。普段は、各種ヘリの整備、修理や管理、法定検査代行業務のほか、スカイダイビングなどを行う一民間ヘリ会社が、約1カ月間にわたって支援物資を運んだ理由とは。パイロット兼整備士として、東日本大震災の緊急支援に大きく貢献した高橋雅之社長にお聞きします。
官民が連携し、現場主導の体制づくりを
高橋さんが、Civic Forceと連携する意義はどんな点にあるのでしょうか。
2009年2月、Civic Forceのスタッフから「日本で災害が起きたとき、いち早くヘリを出してくれる人を探しているが、大きなヘリ会社ではなかなか協力を得られない。協力してくれないか」と依頼されたのがはじまりです。1995年に起きた阪神淡路大震災や2004年の新潟中越地震のとき、パイロットとして何かできないかと思っていましたが、小さな一民間会社にできることは少なく、歯がゆい思いをしていたので、迷わず協力を決めました。

以来、Civic Forceが静岡県袋井市と提携して防災訓練を実施する際などに、ヘリの訓練を担当しました。3・11のときは、まさにこの訓練が生かされたと思います。訓練では、ヘリを初めて間近で見たというスタッフもいる中、東京からヘリでの移動、着陸時のヘリの誘導の仕方や安全確認、燃料補給の方法などを伝え、またけが人を病院まで輸送するというシミュレーションも行いました。そこで知識を習得した方が今回の震災で、ヘリの誘導を担当するなど、直接の効果がありました。

東北で震災が起きる前、Civic Forceは、国内での地震発生地域を東海・東南海と想定し、食料などの緊急支援物資を静岡県袋井市の倉庫に置いていましたが、災害発生直後に、それらの物資を緊急性の高いものは結城ヘリポートまで運び入れました。そして、企業からの協力も得て、埼玉県に確保した倉庫に集約させるなどのロジラインを確保し、結果的に計540品目・380トンの支援物資を調達・配送したのです。大量の物資を早い段階で運ぶことができたのは、連携する企業や行政それぞれが、有事のときにどんな対応をすべきか、それぞれの役割分担と意識付けがなされていたからだと思います。気持ちだけあっても、実際に運ぶモノがなかったり自治体との関係ができていなかったらやれることは限られていたでしょう。

私自身も、「少しでも早くヘリを飛ばすことが、その後の被災地支援の状況を変える」という認識でいました。大規模災害時に、企業、NPO、政府、行政が連携して効果・効率的な支援を目指すCivic Forceのビジョンを共有していたからこそです。
新しいことを始めるのは、それなりのリスクも伴います。
現在日本では、災害時にヘリを飛ばすことができるのは、事実上、海上保安庁や消防、防災、ドクターヘリ、自衛隊など政府組織が中心です。発着場所や燃料の確保など、一民間企業が入り込むのは難しいとされてきました。ただ、圧倒的な支援物資の輸送ニーズやけが人の輸送など、今回のような大規模災害時には政府機関だけではカバーしきれない点もあり、政府や被災地行政が民間と連携してこそ、大幅な対応能力の拡大が可能になると思います。

今回の震災ではまさに、支援の窓口となる行政が被災してしまったため、NPOは自治体をサポートしながら、同時に被災地のニーズに応えていました。臨機応変な動きができる民間にこそ把握できるニーズがあり、そのニーズに応えていくために、私のような一民間ヘリ会社がヘリを飛ばす意義もあると思いました。
今回の東日本大震災を振り返り、今後に生かしていけることとは。
今回の震災を通じて「自分が責任を取る」と言える人がいかに少なくなってしまったかということを改めて痛感しました。例えば、事故があったときに責任をとるのは当事者。ヘリの操縦でいえば、全責任はパイロットにあります。

被災地に物資を届けて結城ヘリポートへ戻る途中、一時、吹雪になって帰れなくなったことがありました。向かい風で機体が前に進まず、燃料も限られているため、名取のイオンで寝泊りしたんです。そして次の日、天候の回復を確認して何とか戻ることができました。安全を確保することはもちろん最優先ですが、結果的に一泊した分だけ時間をロスしてしまったことが悔やまれます。

ではどうすればよかったのか。実は途中に陸上自衛隊霞目駐屯地に一旦機体を降ろさせてもらえないかとお願いしたんです。でも「政府から依頼のあった機体でないと受け入れられない」「責任とれない」の1点張り。この有事に平時みたいなやりとりをしていてどうするのか、と憤りを感じました。

ただ、その窓口の担当者も悪気があったわけでもなく、組織の決まりごとの通りに行動しただけ。責任を負わせるのも無理な話だと思います。それならば、もう少し現場が判断できるような仕組みを、行政と民間が連携して、創っていく必要があるのではないでしょうか。現場の行政関係者がもう少し要領よく、臨機応変に支援活動をすることができれば、実はもっと多くの人の命を救うことができていたのではないか、そう感じる現場に何度か遭遇しました。

中央政府、地方自治体、大企業、中小企業、NPO、それぞれにできることがあり、各得意分野を共有し合う関係づくりを、今後早急に創っていくことが大切です。

私は、「私自身にできること」を考えたとき、やはりヘリを飛ばすことしかできません。一刻も早く少しでも多くの人を救うために、これからもCivic Forceとの連携を通じて、次の災害に備えたいと思います。

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